Beyond the memory

音楽と映画と酒場にまつわる話

西元町のバー

神戸に住んでいたとき、

ここなら探偵事務所に向いてるなと思うビルがあった。 

三ノ宮で散々呑んだ後、いつも、ここに立ち寄った。 
いつも、三ノ宮の高架下から元町の「モトコー」を通り、

おしゃれな若者達がそぞろ歩く通りから、

ギリシャ語からベトナム語あるいは広東語を耳にし、

おそらく船員であろう男達が家電をあさる闇市みたいな雰囲気の通りを抜けると、

そのバーはあった。 

そのビルの古びたエレベーターに乗り3Fに着くと、 
怪しげに紅い照明にてらされ、ビロードのカーテンがあった。 
まるで「ツインピークス」の場面を思い出させた店内は、 
いつも、ケンカしてるのか、イチャツイテルノカ、わからないが、 
その客以外はいなかった。 

なれなれしく話しかけてきた若い男は、妹と同級生だった。 
新開地の近くに住み、 
外国人相手の賃貸と引越屋をしていると言う。 
R&Bと時には昭和歌謡ターンテーブルに物静かに手をやるマスターは、 
持って行った「ショーグン」(ショーケンじゃない)のCDをかけてくれたが、 
こんなんもあるでと、

竹中直人」が歌うボサノヴァのレコードをかけてくれた。 

 

テーブルに置かれたハイネケンの小瓶のミドリが紅い照明に映えていた。 

この店の上に、「探偵事務所」があったらええやろなと思いつつも、 
深い酔いも醒めつつあった。 

窓の外には、水の流れるオブジェみたいなのがあったが・・・ 

幻やったんやろか・・・ 

震災後、ビルは残ったが、バーは無くなっていた。 

 

 

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